- 昭和32年に事務所開設とお伺いしていますが?
- はい、歴史は長いです。正確には父の代からの事務所開設となります。昭和41年に現在の場所に移転しました。おそらく熊本では一番古い法律事務所でしょうね。古くから立ち上げた事務所ということもあり、多くの方と関わり合うことが出来たことが何より光栄です。
- 現在は仮事務所ということですが?
- 熊本地震のあと、建て替えのために仮事務所にて業務を行っております。
旧事務所から徒歩5分の距離にあり、便利なところです。
- 主にどのような事件を扱っているのですか?
- 民事事件、刑事事件全般を扱っています。よく「専門は何ですか?」と聞かれることがあります。「離婚を専門に扱っています」とか、「交通事故が専門です」とか、「債務整理を専門にしています」と言うように、専門性を出したほうが相談される側は安心されるようです。逆に「どんな事件でも扱っています」「専門は特にありません」と言うと、「専門ではないんだ」と引いてしまわれる方もおられるようです。しかし東京や大阪などの大都会と違って、政令指定都市になったとは言え、中規模都市の熊本市のような場所で弁護士をやっていくうえでは、どのような相談が来ても、きちんと専門家として対応できるだけの素養と能力を有していなければ実際には仕事にはならないと思っています。ただ、時代の要請や地域の特性、またこれまで扱ってきた事件の種類などで、取り扱う事件にも特色が出てきているという感じはしています。最近は相続問題や企業間のトラブルなどに関する相談が増えて来ています。
- 事件対応時のポリシーや依頼者の方への接し方で心がけていることはありますか。
- まず、仕事を選ばないことです。相談者の方へ弁護士という立場で接することになるので
すから、例えばペイしないとか、難事件で、大変な労力を要求されそうだといった理由で
依頼を断るというようなことはあってはなりません。そして一旦引き受けた以上は、例えどんなに小さな事件でも全力で対応するように心がけています。
依頼者の方にとっては御自分の人生の重大な出来事であるからこそ、弁護士に依頼しているのですから、その重みを自覚し、常に情熱を持って事件としっかりと向き合会って丁寧に対応することが大切です。それと後一つは私が常々思っていることですが、理論は説得の材料であり、技術ですが、それがすべてではありません。
むしろ、事件を通じて「人の心の痛みがわかるように心がけること」の方が大事だと思います。依頼者の方に「安心」と「信頼」を感じて頂くためにこれからも全力を尽くしたいと思います。
- 一般の事件以外にも特に扱っている事件はありますか?
- 私個人としては、一般事件以外にも集団訴訟や大型の事件にいくつも関わってきました。
水俣病裁判、ハンセン病の裁判等です。水俣病裁判では3次訴訟と言って企業だけでなく、国や県を相手とする裁判に参加しました。ハンセン病の裁判では国の隔離政策の誤りを是正する画期的な判決を勝ち取ることが出来ました。もちろん、弁護団を組んで、多くの方々の支援と国民的な理解を得なければ裁判で勝つことは出来ないということを学びました。
一般事件について、依頼者の方のために、一生懸命仕事をするのも大変大事ですし、それが弁護士業務の基本であると思います。しかし、集団訴訟に参加したことで、視野を幾重にも広げることが出来、複合的に事実を見る眼を養うことが出来たのではないかと思っています。集団事件では現在も刑事の再審事件(松橋事件)を扱っています。
また、裁判ではありませんが、九州弁護士会連合会の人権擁護委員会の委員として、また日本弁護士連合会の水俣病対策プロジエクトチームの座長として、今なお解決しない水俣病問題について大会決議や日弁連意見書による意見を何度も述べてきました。
- 司法書士や税理士などの隣接業種との連携はどうしていますか。
- 迅速に対応出来るように、隣接業種の方々とは信頼関係を大切にしています。 例えば、不動産の登記や鑑定、相続遺産の評価等の業務を行う上で司法書士や税理士等と連携する場面がありますので、このような連携は非常に重要だと思います。信頼関係から成り立つ迅速な対応を整えておりますので安心してご依頼頂ければと思います。
- 座右の銘というものはありますか。
- 私が弁護士に成り立てのころ、大先輩弁護士から「事件が弁護士を育てる」と言われたことがあります。「どのような弁護士になるのか」は、「どのような姿勢で個々の事件に望むのか」という、日々の積み重ねの結果であるということを弁護士という仕事の年月を重ねるたびに実感し、再確認できます。
「才能とは情熱を継続できることが出来る力である」という言葉も同様の意味に理解したいと思います。
- 弁護士の急増や、熊本という地域での活動等、今後の展望や考えを聞かせください。
- 司法改革による司法試験合格者の大量増員により、弁護士の数は一世代前に比べれば飛躍的に増加しています。熊本県弁護士会には毎年10名~20名の若い弁護士が入会しており、かつて熊本県下の弁護士数が100名未満で推移していた一昔前に比べれば、隔世の感があります。熊本県下の弁護士数が、400人体制、500人体制になるのは時間の問題であり、弁護士過剰の時代に突入することになるでしょう。そして、弁護士の業務も自由競争にさらされ、弁護士収入の多寡だけが弁護士の能力の尺度にされるという危惧があります。しかし、弁護士業務は単に商品を売ったり買ったりするのとは違っており、売上の実績や数字だけで推し量れるものではありません。弁護士は人と人とのトラブルに入って、裁判制度を通じて、紛争を解決することで、依頼者の人権、利益を守っていくという役割を有しています。人を相手に仕事をしていく、しかもその中でトラブルを解決していくという難しい役割を担っています。その際経済的な得失だけを仕事の尺度にすると、本当に道を間違えてしまう。そして、経済的な得失にとらわれ過ぎると、よい結果を生まないのではないかという気がしています。むしろ、このような時代だからこそ、弁護士倫理というものを常に考えて、仕事をしていく必要があると思っています。
また弁護士過剰の中で、自分は弁護士としてどのような仕事をしていくのかということを一般の方にも知ってもらう必要があると思います。本ホームページで業務内容について詳しく述べたのも、今回メッセージとして自分の考えを述べさせていただいたのも、そのような思いからです。